ハムレット症候群「すべて他人の所為」テンペストのように仇敵をゆるせるか? その前に十分な力を蓄えることができるか?
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シェイクスピアの名前だけは聞いたことがあるだろう
その作品を読んだことはある?
また、読んだことはあっても、今も断片的でも記憶に残っている?
今回は、シェイクスピアの深読みというか、斜めからの私的な考察で解説してみよう
戯曲だから舞台上で演者がセリフを言う
シェイクスピアの戯曲は、とにかく冗長
無駄に長い
はしょって結末にたどり着きたい
ところが、この意味のないようなセリフこそ、シェイクスピアの楽しみである
なお、結末がバッドなら悲劇、グッドなら喜劇 と言うらしい
命題(テーゼ/正/即自/アンジッヒ)と、それと矛盾または否定する反対命題(アンチテーゼ/反/対自/フュアジッヒ)、それらの統合命題(ジンテーゼ/合/アンウントフュアジッヒ)
といってもさっぱりだが、
統合命題を結論として、これを導き出す前座として命題と反対命題が用意されると思えなくもない
命題→反命題→総合命題
正と反から、合へいたるには、止揚・揚棄・アウフヘーベンと言われる
簡単には、命題があれば、かならず反命題があり、両者の対立は解消されない
そこで、両者を含みながら問題解決するには、両者の上位へ
この弁証法で、シェイクスピアの三作品を考察してみる
まずは『ハムレット』
シェイクスピアの四大悲劇の1つ
有名なセリフ
To be, or not to be, that is the question.
代表的な訳は
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。」
上記に紹介した本の翻訳では
「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。」
なお、「死ぬ」という言葉が、このあとに頻繁に出てくるので、生き死にの訳がふさわしいように解説されることが多い
しかし、このセリフのあとにすぐ
どちらがりっぱな生き方か、このまま心のうちに
暴虐な運命の矢弾をじっと耐えしのぶことか、
それとも寄せくる怒濤の苦難に敢然と立ちむかい、
闘ってそれに終止符をうつことか。
ということで、この投稿では、このままでいいのかの訳が、よりふさわしいと判断したい
ちなみに、この迷い、煮えきらない、決断しない、優柔不断のまま過ごしてしまうことで、結果として大勢の人たちが死ぬことになるのだが…
ハムレット:主人公
ハムレットの父の亡霊
クローディアス:ハムレットの父の弟 / 現デンマーク国王
ガートルード:ハムレットの母 / クローディアス
オフィーリア:ハムレットの恋人
レアティーズ:オフィーリアの兄
ボローニアス:オフィーリア、レアティーズの父
ハムレットの父は前デンマーク国王
ハムレットは、尊敬する父が亡くなったあと、母が別の男、気に入らない父の弟と結婚したことに腹を立てている
そして父の亡霊が現れ、自分の死の真相と、ハムレットにある使命を与える
これが、トリガーとなる(他から)
母に腹を立てているので、責め立てる
そこで、ある事件を起こす
この事件が元で、最後の災難を招き寄せる
最後にいたる直前、父の真相を確かめるために、役者たちに真相を模した芝居を上演させてハムレットは確信する
そして最後に、父の亡霊の使命を果たす
偶然に
しかも、大勢の人たちが死ぬ
もちろん、ハムレットも…
他からのトリガーで、悩み悶える
ところが、自ら事件を起こし、災難は他におよぶ
そして自分と多くの人たちの最後の災難を招き寄せる
トリガーは、他から
最後にたまたま、トリガーの問題解決となる
次は『リア王』
これも、シェイクスピアの四大悲劇の1つ
とにかく、父王が、3人の娘に、自分への愛を問い、その後、破滅する話はご存じだろう
間にパラレルで話が進行し、ほぼ災難が二重に展開する
このパラレル話は、妾腹の息子が父親を騙して嫡男をおとしいれ
伯爵家を乗っ取ろうとする
冗長で読み進めるには忍耐が必要
無駄に思えても、セリフを楽しむべきだろう
リア:主人公 / ブリテン王
ゴネリル:リアの長女
リーガン:リアの次女
コーディーリア:リアの三女
グロスター伯爵
エドガー:グロスターの嫡子
エドマンド:グロスターの庶子
グロスター伯爵とその息子たちが、パラレル話を展開する
リアには3人の娘がいる
その3人の娘に、自分を愛しているのか問い詰める
これがトリガーとなる(自ら)
長女も次女も、心にもない愛を語り
三女は、父を愛しているがすべてを捧げることはできない、結婚すれば夫に愛のすべてを捧げる。と言う
リアは、財産、領土を長女と次女に与え、三女には何も与えず、フランス王の嫁に出す
この自らのトリガーによって、他からの災難を呼び込む
長女に追われ、次女に追われ、嵐の中をさまようことに…
最後の災難は、ほぼ全員の死
引退するにあたって、3人の娘に自分への愛を問い、これが発端の事件
自ら引くトリガー
このトリガーによって、まず三女がリアからの災難をこうむる
リアは続いて、他からの、長女次女からの災難をこうむる
トリガーは、自ら
次から次と、自他の災難が続き
主人公は、「嵐」の中をさまよい
そのまま、おわりを迎える
最後に『テンペスト』
シェイクスピアの最後の作品と言われている
テンペストとは、「嵐」
シェイクスピアの悲劇は、死がつきものだが
これは「喜劇」なので、ハッピーエンド
とにかく、退屈しないし、読んで楽しい傑作
プロスペロー:主人公
ミランダ:プロスペローの娘
アントーニオ:プロスペローの弟 / 現ミラノ大公
アロンゾー:ナポリ王
ファーディナンド:アロンゾーの息子
プロスペローは前ミラノ大公
十二年前、主人公はミラノ大公の座を奪われ、ある島に流れ着く
これが他からのトリガー
そして、プロスペローによる事件、妖精を使って嵐を起こし全員を島に漂着させる
最後は、災難を引き起こした仇敵を主人公がゆるして、大団円
トリガーは、他から
また、妖精に命令して「嵐」を起こさせ
仇敵を含む多くの人々を島に漂着させる
最後に、トリガーの仇敵をゆるし、ハッピーエンド
この投稿では、シェイクスピアの作品書評でもなく
また、弁証法の解説でもない
思わせぶりの蘊蓄でもないつもり
弁証法は、正反合、テーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼ、即自・対自・即自かつ対自、命題・反命題・総合命題
それを、ハムレット、リア王、テンペストで考察すると
命題は、ハムレット
トリガーは他から
自分の行動で他者に災難をもたらし
最後は多くの人たちの死
災難のトリガーが、他から引かれるのであれば、逃れようがない
自らはトリガーを引かないよう気をつけるべき?
そうすれば、災難に見舞われない
反命題は、リア王
トリガーは自ら
このトリガーは自分の行動でもあり
三女に災難を与え
長女次女から災難を与えられ
最後はほとんどの人々たちの死
ところが、自らトリガーを引いていて
「嵐」の災難をこうむる
しかし、パラレル話もからんで
自らのトリガーがなくても
エドマンドが暗躍して、多くの人たちの災難を招く
ということは、自でも他でもトリガーとなり
災難はふりかかる?
統合命題は、テンペスト
トリガーは他から
主人公が他者へ手心を加えた災難を与え
自分に災難をもたらした仇敵をゆるし
ハッピーエンドに
(命題の)他からのトリガーで災難をこうむっても
(反命題の)自らのトリガーでこうむった「嵐」を演出して
(統合命題で)災難の原因である仇敵をゆるしてこそ、望ましい結末
現状で自分が、他のトリガーによって災難にさいなまれているとして
ハムレットはたまたま他に災難を与え
テンペスト(プロスペロー)は、意図的に他に災難を与えている
災難のトリガーは、他からばかりではなく、自ら引くこともある
確実に、他が原因で災難に見舞われていたとしても
こちらが、他へ災難を与えることもある
テンペストのプロスペローのように、圧倒的な力があれば、災難のトリガーを引いた他・仇敵をゆるすこともできるし、望みの結果にすることもできる
これが、弁証法的考察、統合命題にいたるアウフヘーベンである
だがしかし、多くの人間は、ハムレット段階で留まる
父が殺され、母が寝取られ、父の亡霊に仇討ちせよと言われ、考えがまとまらず、行動を起こさず、「このままか、そうでないか」悩み続ける。決着をつけることができない
そして、母を責めている部屋で、ボローニアスを殺害
その娘、恋人であるオフィーリアには「尼寺へ行くがいい」と突き放し
その息子、レアティーズは、父の仇討ちを決意する
レアティーズに対して、自分と同じトリガーを引くことになる
(この段階で、リア王と同じ、自らのトリガーとなる。つまり正から反への転化)
ハムレットもレアティーズも、他からのトリガーなので、自分が不幸なのはすべて「他人の所為」とみなすことになる
とくにハムレットは、自分が他人に災難を与えていることは、思いもよらない
あるいは、些細なこと、どうでもいいこと、斟酌しなくてかまわない
そして、決着もたまたま、これまた他からとなってしまう
私見では、父の仇討ちをさっさと遂げていたら、そこで完了した可能性があっただろうか?
父であっても亡霊が語る言葉は、真実かそうでないか、信じ切ることができなかった
これが、仇討ちに着手できない理由だったのだろう
ハムレット症候群は、他からのトリガーが原因であっても、テンペスト(プロスペロー)のような圧倒的な力がなく、まして仇敵をゆるすこともできない、やがてリアのように自らのトリガーと反命題へ転化し、多くの人々を災難に巻き込んでいく
自分に害を与えた人に、復讐せずに
ゆるす
ただし、望ましい結果をもたらすこと
そのために、圧倒的な力を取得すること
報復ではなく、力を蓄えることによって
満足できる結末を迎え
害悪をもたらした者たちを、ゆるすこともできる
一般的には、ハードルが高いとかもしれない…
だからこそ、『テンペスト』は絶大な人気がある作品となっている